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アカプルコ湾を海から
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アカプルコはカンクンと並ぶメキシコの有数のリゾート地
ですが、一昔前まではアカプルコがナンバーワンでした。
メキシコシティに留学している友人のところへ遊びに行った
とき、昔プレスリーの映画で見たアカプルコに行って
みたくなって様子を聞いてみたら、「バスで6時間くらい、
ホテルは一杯あるから予約なんかしなくても平気だし、
2,3日行っといでよ。アメリカ人の若い女の子も多いし
アカプルコは面白いよ」 と言われて、それじゃあと
小さなトランク1個持って夕方から出かけました。
乗り込んだバスは快適だったのですが、トイレ休憩が2回。
屋台みたいな売店では食べ物らしきものは見当たらず、
訳の分からないジュースを一杯飲んだだけ。
午後10時頃アカプルコに着いて、バスを降りると
メインストリートはタクシーの客引きばっかりです。
変なところに連れ込まれてはかないませんから無視して
まず目に入った大きなホテルに飛び込みました。
お金はある買い物をするために結構持っていたし、
物価は安いと聞いていましたから、アカプルコでも
最高級のホテルに泊まろうと考えていたんです。
レセプションカウンターで空き部屋を頼むと満員との返答。
そんなに混んでそうにないのになぁと思いながらも、
仕方がないのでそのホテルのロビーで、持参した
ガイドブックで高級ホテルをいくつかチェック、簡単な
会話を復習したあと、それらを廻ったのです。
ところが何処へ行っても同じ返事で泊まれません。
クレジットカードを先に提示したらすぐに泊まれたはず
ですが、当時はまだカードは持っていませんでした。
11時を廻ってもアカプルコではまだ宵の口。人通りも多く
はじめは気にしてなかったのですが、お腹は減ってくるし
だんだん不安になってきて、4番目のホテルで断られた後、
ガイドブックで覚えたてのスペイン語で「どこか紹介してよ」
と言ってみると、すっと場所とホテル名を教えてくれました。
日本のシティホテルを少し大きくしたようなそこは、
○○ホテルで聞いてきたというとすぐにチェックインできた
ので、荷物を置くとすぐに外へ出て歩きながら目星をつけて
おいた近くのレストランでステーキとビールを注文。
ステーキはすごく安くて、馬鹿でっかく、感激!
でも食べてみると、味はともかくも硬くてなかなか噛み
切れないのを無理矢理飲み込んで、とりあえず人心地。
ホテルに戻り、眠くないのでプールサイドのバーへ。
カウンターでテキーラサンライズを飲みかけると、少し
離れて飲んでいた大柄のの男が話しかけてきたのです。
イタリア人で巻き舌の英語なのでとても聞き取りにくいのを
我慢して話していましたが、奢ってやるからもっと
飲めとかうるさくて、だんだん鬱陶しくなっていつ
切り上げようかと困ってました。
すると男がトイレに行ったとき、バーテンがカタコトの
英語交じりで「おまえ一人だろ。ここはホモが多くて
日本人向きじゃないから早くホテルを変えたほうが
いい」というようなことを教えてくれたので、
こりゃえらいこっちゃとバーを早々に退散。
翌朝早々にチェックアウト。
初めて見るアカプルコの浜辺は大きな
弧状に広く開けていて真っ青な空と海が爽快そのもの。
でも海へ行く前に先ずはホテルを決めなければいけません。
昨日の経験から飛び込みは難しいと思い、旅行代理店を
探したんですが、そんなものありそうにないので、
タクシーの運転手に頼ることにしました。
たまたま乗ったタクシーは気のいい男で、昨日の事情を
話し、どこでもいいから高級ホテルをと頼むと、
片っ端から私を乗せたまま降りていって交渉してくれ、
5軒目でやっとチェックインできました。
アカプルコでは中級クラスに見えましたが、部屋に
入ってビックリ。20畳くらいの広さにダブルベッドが
2つ、毛足の長いカーペットの床でバスルームも広く、
ものすごく豪華なんです。それで料金は昨夜のホテルと
そんなに変わらない。きのうはボラレた・・・。
さあアメリカ人をガールハントと意気揚々浜辺に出た
ものの、話し声に聞き耳を立てても聞こえてくるのは
スペイン語ばっかし。たまたまかもしれないけど
アメリカ人の若い女の子なんて全然いません。
砂浜をぶらぶらしながら上を見上げるとパラシュートが
いくつか開いています。そう、アカプルコで
パラセーリングもやってみたかったんや。
浜辺の何ヶ所かに人だまりがあり、順番待ちの列に
並んで様子を伺うと、係員がひとりずつパラシュートを
装着しながら操作説明をしています。
自分の番になって説明されても、言葉はほとんど
わからないけど、降下体勢に入ってから、下で
手を振る合図があれば、自分とパラシュートを
繋いでいるベルトを引っ張って高度と方向を
調節するということは大体理解できました。
モーターボートが沖に向かって動き出すと簡単にスッと
浮かび上がり、みるみる高く舞い上がっていきます。
どのくらいの高さか見当も付きませんが上から見下ろす
アカプルコの景観は大きな弧状に真っ青な海と
白い砂浜の境界線がくっきりとして、その砂浜に沿って
ホテルや建物がどこまでも続き最高の眺めです。
しばらく空中を散歩した後、徐々に高度が下ってきました。
合図を見てベルトを引っ張り始めましたが、私の前に
飛んでいた女の子の何人かが、引っ張る力が弱くて
着地に苦労しているのを見ていたので、心持強めに
していたんですが、このままでは海に着水するんじゃ
ないかと感じていたところへ、下から皆が大きな
声でもっと引けというように騒いでいます。
慌てて力いっぱい引き出したのですが、どうやら引きすぎと
騒がれていたようで、みるみる浜辺を通り過ぎて2階
建ての壁が迫ってきます。やっと手を離せと言って
いることに気が付き、離すとほとんど同時に建物の
手前の板塀に突っ込み、ケガはなかったものの
塀をちょこっと破損して何とか着地。
怒られるかと思ったけど無事でよかったてなことを
みんなに言われて一安心。
そのあと浜辺で日光浴していると、女の子は誰も
寄ってこないんですが、10代前半の少年達が私を取り
囲み、カラテ、カラテと話しかけてきます。
アカプルコでひとりで行動している日本人は珍しいらしく、
また日本人はみんな空手をやっていると思ってるのか、
彼らの一人が習っているので試合をしようと
言ってるようなんです。
そんなことできるわけがなく、無視しているとそのうちの
一人がカタコトの英語で一生懸命話しかけてきました。
日本円にして2000円位出してくれたらモーター
ボートでアカプルコのどこかへ案内すると言って
いるのがなんとなく理解できました。
一度ホテルに戻り、ただ一人英語が自由に話せるスタッフに
これこれ誘われたけど大丈夫かと聞くと、あまり余分な
金を持ってさえ行かなければ問題ないだろうというので、
少年に付いていくことにしました。
タクシーに乗ること10分くらいでアカプルコ湾の端の
方に着き、浜辺に行くと、もう少し年長の少年がモーター
ボートに腰掛けており、同行の少年が二言三言
話すと我々2人を乗せて猛スピードで
湾の端から端まで案内してくれたのです。
停泊しているクルーズ船の周りを廻ったり、水上
スキーを避けながら、少年が大声で懸命にアレは何、
これは何と説明してくれますが、モーターの騒音と
英語の拙さでほとんどわかりません。
でもすごい波しぶきを上げながらアカプルコ湾を疾走する
ボートはとても痛快な気分にさせてくれます。
しばらくすると、水面に少し顔を出している岩に、
十代半ばに見える可愛い女の子が4人
座ってこちらに手を振っているのが見えてきました。
彼らの友人らしく、気に入った子がいたら夜にホテルの
部屋に行かせると少年が言ってる様子なので、
ほんとかなぁと思いながらも期待感ではちきれそう。
右から2番目の短い髪の子がいいなと伝えて、やがて
ボートは快感の余韻を残しながら浜へ。
帰りはバスです。少年は私の渡したお金からモーター
ボートとタクシー代を支払うと、もう自分の取り分が
ほとんどなかったのでしょう。
裸足でスタスタ歩く彼の後をついている私は道路が
熱くて陰を選ばないと歩けませんでした。
小遣い稼ぎをする当てが外れた彼を何か可哀相に思って
遅い昼食に誘いましたが彼は固辞し、ホテル前で
部屋番号だけ教えて別れたのですが・・・
つづく
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