【京都弁】
女 「えらいもっさいかっこしたはりますけど、
どなんしはったん?
ちょっとこっち、おいないな。
おこもはんか思いましたわ。」
男 「そらないわ。なんぼ安けのう見えても
これぬくいし、ええもんでっせ。」
女 「そうかいな、そらかんにんやで。
よぉ見たらはんなりしたええ柄やんか。
どっから取ってきはったん?」
男 「かなん人やな、そんなてんご言いないな。」
女 「ようゆわんわ、ほんまにしたはる(笑)。
きぃ直して、むしやしないに
おまんとおぶでもどうどす?」
男 「えらい気ーつこーてもぉて
きずつのぉおすわ。
せっかくどっさかいちょっとよばれまひょか」
女 「その皮はほかしたらあきまへんえ、
あいさにねぶってみたらけっこうええ味
しますやろ。」
男 「ほんに、まったりしてなかなか
よろしおすわ。」
女 「こないだ頼んどいたあれ、どないです?」
男 「まだできてしまへん。さぶなってきたのに、
えらいどんなことですんまへん」
女 「あんじょうしといてや。
そんでこれからどこ行かはんの?」
男 「そのろぉじのどんつきの医者んとこ」
女 「どなんしはったん?」
男 「いやな、おいどにでんぼできよったさかいに
いっぺん診てもらおおもて」
女 「あすこの看護婦さんかいらし顔したはる
けどものすごいけずやし、きぃつけな
あきまへんで」
男 「知ってま。もともとええしの出やし
ほんまにはんなりしたはるけどな。
わしも人にはよーせなあかんて、せんど
ゆうてんにゃけどいっこも聞いてくれはらしま
へんしかなんわ」
女 「そんなん、たいがいにおしやす。
あほみるで。」
男 「それよか、あの木のねき見とぉおみやす、
なんやけったいなもんほかしたありまっせ」
女 「にぬきみたいでんな。かましまへん、
そんなしょうもないもん放っといて
おくれやす」
男 「そやけど、ほかのもんもしもとかな
あきまへんやろ。よっこらせと」
ガラガラガラッ! 「あったたた」
女 「なにやったはりますねん、
いわんこっちゃおまへんがな。もぅよろして」
男 「へぇ、すんまへん、そないしときます。
ほな、おおきに、ごっつぉはんどした。
ごめんやっしゃ。」
女 「おおきに。また寄ったっとおくれやっしゃ」
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【標準語】
女 「すごく野暮ったい格好してるけど、どう
なさったの?
ちょっとこっちへいらっしゃいな。
浮浪者かと思ったわよ。」
男 「そんな馬鹿な。いくら安っぽく見えても
これ暖かいし、いいものなんですよ。」
女 「そうなの、それはごめんなさいね。
よく見たら上品ないい柄だわね。
どちらで取ってこられたの?」
男 「いやな人だな、そんな冗談いわないでよ。」
女 「あらやだ、ほんとうにしてらっしゃる(笑)。
きげん直して。ちょっとお腹も空いてるでしょ、
おまんじゅうとお茶でもいかがです?」
男 「そんなに気を使ってもらったら
心苦しいですよ。
せっかくですからちょっとごちそうに
なりましょうか」
女 「その皮は捨てたらだめですよ、あいだに
舐めてみたらけっこういい味するでしょう。」
男 「ほんとに、とろりとまろやかで濃い味で
なかなかよろしいですね。」
女 「このあいだお願いしておいたあれ、
どんな具合です?」
男 「まだできてないんです。寒くなってきたのに、
たいへん手際の悪いことで申し訳ありませ
ん」
女 「うまくやっておいてね。
それでこれからどこへお行きになるの?」
男 「その路地の突き当たりのの医者のところへ」
女 「どうなさったの?」
男 「いえね、お尻にできものができちゃったんで
一度診てもらおうとおもって」
女 「あそこの看護婦さん可愛い顔してらっしゃる
けどものすごくいじわるだし、気をつけないと
だめですよ」
男 「知ってますよ。もともといい家の出だし
本当に上品な感じですけどね。
私も人には親切にしないとだめだって、
何度も言ってるんですが全然聞いて
くださらないから困りますよ」
女 「そんなこと、適当にしておきなさいよ。
馬鹿をみますよ」
男 「それより、あの木のそば見てごらんなさい、
なにか妙なものが捨ててありますよ」
女 「ゆで卵みたいですね。いいですよ、
そんな値打ちのないものほっといてください」
男 「だけど、ほかのものも片付けておかないと
いけないでしょ。どっこいしょと」
ガラガラガラッ!「あったたた」
女 「なにやってるんですか、
いわないことじゃないでしょ。もう結構ですよ」
男 「はい、すみません、そのようにしておきます。
では、有難う。ごちそうさまでした。
失礼します。」
女 「有難う。またいらっしゃいね」
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